コラム215号 掲載

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◎今月のコラムは、7月発行「岩手産業保健総合支援センターだより」に掲載している当センター【産業保健相談員 小野田敏行先生】のコラムをご紹介します!

バイアス

産業保健相談員 小野田 敏行(産業医学)
【岩手大学 教授 保健管理センター長 産業医】

 疫学研究では様々な病気について、どのような生活習慣や特徴を持った人がなりやすいのかを調べますが、この時に問題になるのがバイアス(英:bias)です。バイアスは「偏り」、強く言うと「偏見」で、これの影響で間違った結論となってしまうことがあります。

 ある病気の患者さんの特徴を調べ、そうではない人たちと比較した時に患者さんで目立つ特徴があれば、それがその病気になりやすい要因だろう、とする患者対照研究の場合を考えましょう。過去の生活習慣はアンケートなどで調べますが、患者さん群では、いかにも健康に悪そうな生活習慣については、そのせいもあって病気になったのだろうなと思って多く答えやすくなりますし、対照の群では健康なのであまり気に留めず、より少なく答えやすくなります。そうすると、その生活習慣は患者さん群で多く、対照の群で少なくなることから、実はその病気と全く関係なくても犯人扱いとなります。聞き出す側も、患者さんに聞く時、その習慣があると答えたら、そうでしょうと深く頷き、無いと答えたら、え、本当ですか?などと聞き直したり、逆に対照の人には全く反対のことをすると、さらにより強い冤罪の完成です。

 私たちの日常生活でのバイアスの例を一つ挙げます。最近、〇〇が多いね、という話をしたり聞いたりすることがあるかと思います。はっきりとした増加でなくとも一度気になってしまうと、次に同じことがあった時、ほら、やっぱり〇が多いよ、と強化されてしまいます。これは認知バイアスの一種ですが、逆に、はっきりと増えていても、いやいや、いつも通りだよ、と決めつけてしまうという認知バイアス(正常性バイアス)もあります。いつもと違うこと、特に危険が迫っていても「今まで大丈夫だったのだから今回も大丈夫」と考えてしまうことで、適切な対処の遅れに繋がります。

 統計の有意差検定で言うと、前者は明らかな差は無いのに差があるという結論に飛びついてしまう第一種の過誤(αエラー)、後者は明らかな差があるのに差があるという結論をいつまでも出さない第二種の過誤(βエラー)と説明されます。統計の入門書ではαはあわて者、βはぼんやり者として覚えなさいとありますが、さて、あなたにはどちらの傾向がありますか?

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